上田氏との打ち合わせ:3/~さらなる調整とテスト(ペグ・その他)~ 2013年5月13日

上田氏との打ち合わせ:3/~さらなる調整とテスト(ペグ・その他)~

2013年5月13日

 

“ファインチューン・ペグ”(ドイツ:ウィットナーWittner社製)が取り付けられた。この製品は優れたギアメカニズムを内蔵しており、通常テールピース上のアジャスターで行うような微調整を、アジャスターなしでペグのみを以って行うことが可能になるのである。

前回までのアジャスターは取り外され、代わりに、弦が直接テールピース本体に当たるのを避けるために、テールピース上部に小さいブリッジが加えられた。

テールピースの弦の下部を通すホールは、各弦を張ったときにそれぞれ異なった長さになるように(高弦のE線は最も短く、低弦へ向かって次第に長くなりC線は最長となるように)調整された。これは、E線のテンションを緩和し、鼻にかかった音質を減少させるために試みられたものである。

 

前回行ったテールピースのアジャスターの除去によって、駒からテールピースまでの弦長はかなり長さを増すことになった(つまりは弦の全長が長くなったと同義)。そこで、エンドピン・ソケットからテールピースまでのコードを長くし、テールピースの位置をより駒に近く移動してみることを協議した。この調整は次回のサウンド・テストまでに行われる予定である。

 

サウンド・テスト結果[3](ファインチューン・ペグ装填;軽量化したテールピース)

 

ウィットナー社のファインチューン・ペグは良く作動し、現時点ではアジャスターを除去したデメリットは特に感じられない(最終判断にはもうしばらく観察期間を要する21)。

ペグに内蔵されたメカニズムはギア・トランスミッション(ギア比8.5:1)により正確な調弦が少ない力で簡単にできる。新しい弦のペグホールは通常の4弦時の位置よりどうしても下部に設置せざるを得ないため、必然的に適した音程までにペグを巻く必要回数も通常の弦よりも多くなる。このメカニズムでは弦が正しい音程に巻きあがるまでに非常にゆっくりと時間をかけられ、調弦の際に急激に弦を伸ばして切ってしまうリスクが軽減できる。このことはとりわけ、細い巻きの弦であるE線に対し有益である。

 

新しいテールピースは、視覚的、また軽量化などの実務的な改良は得られたものの、音に関して言えば、ごくわずかな音質の向上のみにとどまった。全体の音質は確かに変化したとも言えるが、肝心のE線の音質は特に変化がない。

 

いずれにせよ、ファインチューン・ペグの調弦の効果は、本プロトタイプⅠのみにとどまらず、他のチェロの装備についてをも考慮させるに十分なものであった(私見だが、もし装備されたペグが今後もこの機動性を維持し続けるとなれば、いずれはテールピースのアジャスターは不要となり、完全にこのペグに取り代わることも視野に入ってくるのではないか)。

調弦時のE線切断のリスクが軽減されることから、必然的に次のプロトタイプ、及びプロジェクトの最終製作楽器についても、このペグの使用が推奨された。アコースティックな利点は小さいかもしれないが、実質的にE線(小ロット生産のため高額である)の保持を考慮すればこのペグへの支出の利点は大きいと言える。

  画像13

画像13: 現在の形のテールピース。頭部はアジャスターに適合するように設計されているため、幅が広く取られている。これは、プロトタイプⅡ(同じくファインチューン・ペグを装備し、より狭い幅のテールピースを取り付ける予定)のサウンドテスト等を行った後に補正することを考慮中である。


21 装備から2ヶ月:調弦後、数日経過すると音程はわずかに下がる。これは天候に由来するものか、またはペグが動いたためなのかははっきりとしない。装備から5ヶ月後:音程が多少下がるのは、ペグが原因ではないようである。装備して以来変わらず良く機能しており、テールピース上のアジャスターは不要であったと再確認するものである。

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