上田氏との打ち合わせ:7/プロトタイプⅡの製作、及び5弦状態でのテスト 2013年7月6日

プロトタイプⅡはドルによってサウンド・テスト、録音、及び写真の記録が終了した(注22)。

プロトタイプⅡ

構造 プロトタイプⅡの構造は、プロトタイプⅠと基本的には同じである。ただし、プロトタイプⅠの実験から得られた結果に基づき、プロトタイプⅡは、アジャスター なしの幅のやや狭いテールピースを用い、始めからファインチューン・ペグを装備。また、プロトタイプⅠと同様にE線とA線に合わせてすべての弦長を調整し た。その他の違いは駒の種類とサイズであり、プロトタイプⅡはフレンチ・スタイル、プロトタイプⅠはベルギー・スタイルのものを立てた(注23)。

図14:プロトタイプ II

 14

駒の寸法   テールピースの寸法
ボディの幅: 両足間の距離 頭部の幅:
PROTOTYPE I: 74mm 92mm 85mm
PROTOTYPE II: 84mm 92mm 70mm
Four-string: 70mm 92mm 60mm

    オリジナルの4弦状態と音質を比較できるように、楽器にはオリジナル状態と同じ弦(A,D線:ヤーガー、G,C線:ヘリコア)をそのまま装着。E線は、今回はヤーガーを使用。

図 15: プ ロトタイプⅡのフレンチ・スタイルの駒。駒の足の脇の黄色いシールは、最適なポジション確保の目印。テールピースの調節や弦の張り替えなどの作業に伴い、 駒は頻繁に立て直すことが必要となるが、その際に、この跡が残らないタイプのシールの目印を用い正確な場所に設置するためである 。

15

サウンド・テスト結果[7](プロトタイプⅡ(7/8サイズ)、フレンチ・スタイルの駒、ファインチューン・ペグ、細めのテールピース、E,A,D線:ヤーガー、G,C線:ヘリコア)

第一印象

・E線の音量はとても強く感じられるが、依然としてガンバのような性質である。

・D、G線は、第3ポジション以上になると音質がこもったようになり音量も弱まるようである。

・E音、F音周辺のヴォルフ音は、程度の差はあるが全ての弦の上で確認される。

・全体の印象としては、オリジナルの4弦状態時と比較し、特に低音域に関して、倍音と音量が多少失われているようである。


(注 22) デジタル一眼レフカメラは、本研究の正確な記録のために購入された(それまでは、写真の記録にはドルと上田氏個人のオートフォーカス・カメラを使 用)。カメラは18-55mmのf/3.5-5.6レンズを装備、特に閉所での静的な対象物のクローズアップ撮影に適する。

(注23) ベルギー・スタイルの駒は脚が長く、細いボディから生み出される音は明るく強い特徴を持つ。フレンチ・スタイルの駒は脚が短く、大きなボディから は柔らかで温かい音色が得られるとされる。

ページ上部へ戻る